アスベスト禁止はいつから?法律の変遷とその背景

アスベスト禁止はいつから?法律の変遷とその背景

アスベストはかつて耐火性や絶縁性などの優れた特性から多用されてきましたが、深刻な健康被害が世界的に問題視されるようになりました。

日本でも段階的に規制が強化され、最終的には全面禁止に至りました。こちらではアスベストの性質や使用用途から日本の法規制の流れ、さらに今後の課題までを整理して記載します。

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アスベストとは何か、その性質と使用用途

まずはアスベストがどのような物質で、どのような用途に使われてきたのか、その概要を確認しましょう。

アスベストは天然に産出する鉱物繊維で、耐熱性や絶縁性、耐薬品性など多くの優れた特徴を持つため「奇跡の鉱物」とも呼ばれてきました。かつては建材や自動車部品、さらには家電や家庭用品にまで広く使われており、世界各国で大量生産・大量消費が行われてきたのです。そうした特性ゆえに、高温の環境下でも変性しにくく、コスト面でも優位性があったため、産業発展に貢献した一方で、後に深刻な健康被害が問題化しました。

アスベストの定義と物理的特性

アスベストとは、天然に産出する繊維状の結晶構造をもつ鉱物繊維の総称を指します。繊維が非常に細く、曲げにも強いため、さまざまな形状に成形しやすいのが大きな特徴です。

また、耐熱性や耐薬品性にも優れることから、過去には火災リスクを低減する断熱材として重宝されました。

しかし、この繊維を吸い込むことによる健康リスクが明らかになるにつれ、その利用価値以上に人体への影響が深刻視されるようになっています。

過去における主要な使用用途

アスベストは建物の耐火被覆や断熱材、ブレーキライニングなどの自動車部品、さらには電化製品の部品にまで多用されてきました。建築分野では軽量で加工しやすく、耐震補強の一部にも役立つと考えられていたため、住宅や商業施設、公共施設など幅広い場所に用いられています。家庭用品でもアイロン台の耐熱パッドなどに使われたケースがあり、日常生活に深く浸透していたことがわかります。

アスベスト禁止に至る日本の法規制の流れ

日本におけるアスベスト規制は段階的に強化されており、その背景には社会的・国際的な動向と深刻な健康被害の発生があります。

アスベスト規制は早くは1960年代から作業者保護の観点で始まりましたが、本格的に禁止措置が進んだのは1990年代以降です。社会的に問題視されるきっかけは、企業周辺での集団発症や医療現場での研究が大きく関係しており、大規模な被害の実態が明らかになるにつれて法整備が進みました。こうした流れの中で、2006年には事実上の全面禁止となり、一部猶予措置も2012年に終了することで日本国内では完全なアスベスト禁止に至っています。

1960年代:じん肺法の施行と初期の規制

1960年代には作業現場の粉じん対策を主眼としたじん肺法が施行され、アスベストによるじん肺の発症リスクも少しずつ認識されるようになりました。とはいえ、この時期はあくまで労働者の労働環境改善が主眼であり、アスベスト自体の危険性を大きく取り上げるまでには至りませんでした。しかし、粉じんによる慢性的な疾患が増える中で、アスベスト対策の必要性が徐々に議論され始めます。

1970年代:特定化学物質等障害予防規則の導入

1971年には特定化学物質等障害予防規則が施行され、吹き付けアスベストなど高濃度なアスベスト製品の使用が原則禁止となりました。これは、直接吸い込みやすい形状で散布されるアスベストが特に危険視されたためで、当時の建設現場では大きな転換点となりました。しかし完全な使用プラスチックへの代替も進まず、広範囲での規制にまで至るには時間がかかったのが現状です。

1995年:アスベスト含有建材の規制開始

1995年にアモサイトやクロシドライトなど、特に危険度が高いとされるアスベストの製造・輸入・使用が禁止されました。これによって、アスベスト含有建材から代替建材への転換が業界全体で進められ、工事現場や製造ラインでも対応が求められます。ただし全面的には禁止されていなかったため、ほかの種類のアスベスト含有材料が一部残っている状況でした。

2004年:規制強化の背景と進展

2004年前後にクボタショックと呼ばれる大規模な健康被害報告が社会的な注目を集め、法整備が急激に加速しました。大手企業の工場周辺で中皮腫や肺がんなどの患者が続出し、企業のみならず行政の対応も大きく問われることになります。これを機にアスベスト含有製品の自主回収や、さらなる規制強化の動きが高まったのです。

2006年:全面使用禁止への移行

2006年には、原則としてすべてのアスベストを含む製品の製造・輸入・使用が禁止となりました。これにより、法律上は日本国内でのアスベスト利用がほぼ不可能となり、本格的な「アスベスト禁止」がスタートしたといえます。ただし、既存の建築物やストックされていた材料の問題など、現実の課題はまだ多く残されました。

2012年:猶予措置の撤廃と完全禁止

2012年には一部製品に適用されていた猶予措置も撤廃され、名実ともに日本国内でのアスベスト使用は完全に禁止されることになりました。代替素材の普及が進んでいたこともあり、工業分野では大きな混乱は発生しなかったものの、解体工事などの現場ではアスベストを含む建材の除去や安全対策がいっそう重要視されるようになりました。

アスベスト禁止の理由と背景にある健康被害

なぜアスベストがここまで厳重に規制されるようになったのか。その主な理由は、深刻な健康リスクの存在にあります。

アスベストは吸い込んだ際に繊維が肺に蓄積し、長期にわたる潜伏期間を経て深刻な疾患を引き起こす可能性があるため、使用の禁止は緊急課題となりました。特に産業の現場では職業性曝露による罹患率が高く、作業者だけでなく周辺住民にもリスクが及んだのです。こうした事例が社会問題化し、法規制へ一直線に進む大きな一因となりました。

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